安倍首相の「6割の都道府県が自衛隊募集への協力を拒否」発言(妄言)問題と、その陰で進む適齢者情報の名簿提供依頼(昨日投稿)の件で論点整理。
昨年から自衛隊側は適齢者情報の年齢の幅を大幅に広げて自治体に要求していることが(新潟市への情報公開で)わかった。その根拠は自衛隊施行規則の改正で、その改正には言うまでもなく(「規則」なので)国会は関与していない。その結果現在、自衛隊は18歳から32歳までの国民の個人情報を要求する権利を手にしていることになる(その人数は実に1800万人に上る)。閲覧ではなく名簿そのものの提供を依頼する権利は他の官公庁にはなく、自衛隊だけに与えられた特権だ(ただし、自治体側にはそれを受ける義務はない)。
多くの自治体側が個人情報保護の観点で慎重に判断し、とりわけこのように幅広い年齢層の情報をまるごと渡すことを避け、「閲覧」で対応しようとすること自体は妥当なものだ。
しかし、今回の施行規則改正と安倍発言問題との関係を考えると、今後、次のようなことがあたりまえになってくる危険性がある。
すなわち、国会の審議が不要な省令や規則の改正でどんどん防衛・軍事関係の政府権限が強化・拡大され、それに対して慎重に対応する自治体や民間企業や市民を「非国民」のごとく一国の首相が非難し、しかも「非国民」がおおぜいいるから憲法改正も必要だと煽り立てる、ということだ。今回の事態は、まさにそういうことだ。
マスコミ・報道機関は、そのような観点から、自衛隊法施行規則改正や自治体への提供依頼の拡大とも結び付けて、安倍首相発言問題の深刻な重大性を考えてほしい。